そして最終日、ロンドンからヒースロー空港へ向かう途中に位置する、Royal Botanic Gardens, Kew キューガーデン へ向かいます。ロンドン南西部の街、キューにある王立植物園です。1759年に小さな宮殿併設の庭園として始まり、ジョージ王朝時代に大植物園へと拡大しました。テムズ川上流に位置します。ロンドンでは古い重要な施設の多くはテムズ川沿いに存在していますが、大きな樹木や建材は船でここに運ばれたのでしょう。
かつて、イギリスの植民地からさまざまな植物を集めてそれらの間で品種改良を行い、より強い種として植民地に戻し、プランテーションとして大量生産を行った時代もあるといい、現在でも世界的な視野での種の保存や研究のための機関で、世界遺産に登録されています。
園内には4万5000種といわれる植物と700万の標本が保存されているようで、世界の植物種の10%がここに存在するとか。植物のほか、動物たちも姿を現します。こちらの動物は人が近づいても逃げないですね。
ユニークな枝を持つ松。長寿の樹が多いためか、複雑な形状の枝を持つ樹が多かったです。
園内の広さは120ヘクタール。その中には6つの温室が点在していますが、写真はその中でも最古のパームハウスと呼ばれる温室です。1848年完成、ヴィクトリア朝時代の、ガラスと鉄骨で出来た建築のさきがけ的存在です。建築関係者には有名なロンドン万博のクリスタル・パレスに先立つこと5年。ほとんどの建物がレンガで出来ていた時代、初めて目にするガラスの建築がこのようなスケールと完成度だったら、当時の人はどれほど感嘆したことでしょう。産業革命時代の熱狂が目にうかびます。
パームハウスの入り口。
フレームの美しい形状。
温室内には階段とキャットウォーク的な通路があるのですが、上にあがるとすごい熱気です。換気設備は今の温室ほど整っていないのでしょう。
非常に暑いですが、写真でみると熱帯風でよい雰囲気ですね。
そしてイギリスでは良く見かけたパープルビーチ Purple Beech という紫色の葉を持つ樹。「紫色のぶな」ですね。緑の樹に対比させ、庭を締めるような意味合いでよく使われていました。
このような美しい葉色をしています。
しかし、自分が一番興味深かったのは、写真では分かりにくいかもしれませんが、この樹、葉の裏は緑色なのです。光合成をする葉緑体が日陰に?
あと、これは樹種の問題というより樹齢の問題かもしれませんが、樹の枝が地面に付くくらいまで垂れ下がっているものが多く、写真の樹は完全に地面に付いてしまっています。
これはモンキーパズルという樹です。
このような葉の形をしているため、サルも登るのを困惑する(puzzle)樹、ということで名付けられたとのこと。樹齢が非常に長く、チリの国の樹に指定されています。今でこそ園芸店でも世界のいろいろな植物が見かけられますが、大英帝国時代、世界中の植物を集めたこの庭はさぞや驚きをもたらしたことと思われます。
そして鶏?野生?おいしそうですが、こちらも全く逃げません。
そしてアランさんに話をきいていた、樹の間を歩き回れるという空中遊歩道を発見。
エレベーターで登ること25mくらいでしょうか?上にあがるとこのような風景に。
普段は見れないような視点から樹々を眺められるようになっています。
リング状に一周できるようになっていて、その反対側を見たところ。あまりの高さのため、風でブリッジ全体が揺れます!
床はエキスパンドメタルになっているので、地上がちら見えします。それは怖くないのですが、ビスで止めてあるだけの場所があって床がベコベコしている所が怖いです。
そしてヒースローを発ち日本へ帰国。1週間程度でしたが、イギリスの文化を知り、自国の文化を見つめ直すよい経験になりました。