2012年1月27日金曜日

卒業設計審査

明治大学での卒業設計賞の審査です。

今年は震災の影響か、例年に比べて案に迷いが見られるもの、内省的なものが多かった気がします。時代性を反映するのは悪いことではないと思うのですが、それを超えて卒業設計らしい、自分自身の明確なビジョンを世の中に表明するような案がもっと出てほしいという気がしました。リアルなものを求める傾向もあり、それは好意的に見れたのですが、それであればもっと深い追求を、、と思わせるものもありましたね。あとは震災復興に関わる案がいくつかあり、その意欲は評価できます。


その中で写真が撮れたものをいくつか紹介します。(必ずしもここに紹介するものが自分が票ををいれたもの、ではないのですが)



















滝沢皓史「進化する保存建築〜伊根浦伝統的建造物群保存地区における舟屋のリノベーション〜」
歴史的な街並を凍結的に保存するのではなく、生活の場や、観光の場として使い続けながら保存していくという提案を、このまま実施してもよいと思われるような繊細なバランスで計画した秀作。
 
  
  
  




















 
笹朝斐「あさひはうすと米屋のおじさんと中井商店街」 
これもリアル系の案で、作者が実際に自分の部屋の一部を引回しながら街に根付いていくという、そのストーリーが興味深く、私小説的であるという批判も多くみられましたが、彼女はすでに本当に街に根付いているらしく、自分はパブリックアートのような公共性を持つものとして評価しました。ドローイングの屋台のようなものが物としての計画物なので、これが建築であるか?は微妙なところですが、それでもよいと思う人は評価する、という案ですね。しかし審査会でも多くの人の心を動かしていたことは事実でしょう。
  
  
  
 
 




















小原えり「渋谷浮世絵」
渋谷らしさと日本らしさの共通点を現代的に再解釈し、建築に落とし込もうという計画。企画や作者には強い個性が感じられますが、計画物それ自体はまだまだ検討の余地ありと思います。 
  
  
  
  
  

片山俊基「Circuit Zoo〜円山町分散型動物園〜」
ラブホテル街に動物園を点在させる計画。この案も企画寄りな傾向がありますが、作者は自分の教え子でもあり、彼の長所は比較的そのようなところにあると思うので、評価しました。 
  
  
  
   
   




稲田悠輔「もりと住まい」
自分は毎年「最も参照元が分からない案」に一票投じているのですが、今年は稲田君に。昨今は過去の卒計などの情報がいやでも目に入り、意識的にも無意識的にも、それらをリミックスするように作っている人が非常に多く、そうするとある程度のレベルには達してしまうのですが、この計画はあえて完成度を落としてでも独自の組み立て方で生みだそう、という作者の意思を感じました。アーチ状の構造体の上に住宅が乗っかっている住宅地の提案です。
 
  
  
  
2回の投票と議論を経て、最終的には飯田周悟君の「風景の編集〜小笠原ビジターセンター」が生稜賞(兼任講師の賞)を受賞しました。この計画は風景との距離に着目し、実験的な手法で新しい形、豊かな空間体験を作り出そうという案で、その形態操作の巧みさが評価されました。(写真が撮れなかったのですが)

近年審査員の評価も割れ、そのことからもこれからの建築の向かうべき方向性の多様さ、困難さを感じるという審査会でした。